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以下に、ニュートン反射望遠鏡の光軸調整方法を簡単に説明します。
なお、斜鏡を調整する場合は、必ず望遠鏡を横に倒した状態で行った下さい。望遠鏡を立てた状態で行うと、工具や
斜鏡が主鏡に落下して主鏡を傷つける可能性があります。
なお、VixenのR200SSの様に斜鏡がオフセット(斜鏡が主鏡側に少しずれて取り付ける方法)されている場合は、
最初の「1.斜鏡の位置あわせ」で、ドローチューブと斜鏡の中心がずれていても構いません。
1.斜鏡の位置合わせ
まずは、斜鏡の中心をドローチューブの中心に合わせます。斜鏡の中心に目印を付けると調整は楽です。
目印を付けられない場合は、斜鏡全体を見て中心を判断します。
光軸修正用のアイピースがあると楽ですが、それがない時には、ドローチューブから少し離れた位置から
ドローチューブを覗き込むと判り易いです。
斜鏡セルは、止め金具から3本の押しネジと中央の1本の引きネジとで固定されています。(画像3を参照方)
画像3 |
画像4の様に、斜鏡の中心がドローチューブの中心からズレている場合は、以下の方法で斜鏡の中心と
ドローチューブの中心にあわせます。(画像5を参照、まだ少しずれていますが)
画像4 | 画像5 |
1)斜鏡が、主鏡側に寄っている時(画像4の様な状態)
3本の押しネジを均等に緩め、引きネジを締めて、斜鏡を筒先側に移動させます。
2)斜鏡が、筒先側に寄っている時
引きネジを緩めて、3本の押しネジを均等に締め、斜鏡を主鏡側に移動させます。
3)斜鏡が、上に偏っている時(画像4の様な状態)
右下の押しネジを緩め、右上の押しネジを締めて斜鏡を中央に移動させます。
4)斜鏡が、下に偏っている時
右上の押しネジを緩め、右下の押しネジを締めて斜鏡を中央に移動させます。
2.斜鏡の傾きの調整
次に斜鏡の傾きを調整します。
画像6の様に、主鏡の中心がドローチューブの中心からズレている場合は、以下の方法で主鏡の中心と
ドローチューブの中心にあわせます。(画像7を参照、まだ少しずれていますが)
この場合も、光軸修正用のアイピースがない時には、ドローチューブから少し離れた位置から
ドローチューブを覗き込むと判り易いです。
画像6 | 画像7 |
1)主鏡中心マーキング
主鏡の中央に目印のマーキングを行います。マーキングは、パンチ孔を補強する丸いシール等が良いでしょう。
主鏡の中心部分は、斜鏡の影になるので、小さなマークがあっても光学的な影響はないので、後で外す必要はありません。
マーキングは、主鏡を鏡筒から取り外して、中心部分に子穴を開けた、直径200mmに切り抜いた丸い紙を使うと楽に出来ます。
なお、主鏡を鏡筒から取り外したくない等で、マーキングが出来ない場合は、斜鏡に写る主鏡全体を見ながら、目測で調整して下さい。
2)主鏡の中心が上下にずれて見えている時(画像6の様な状態)
斜鏡の引きネジを少し緩めて、斜鏡を回転させて主鏡の中心がドローチューブの中央の高さに合う様に調整します。
3)主鏡の中心が主鏡側にずれて見えている時(画像6の様な状態)
左側の押しネジを緩め、右上と右下の押しネジを均等に締めて主鏡の中心をドローチューブの中央に移動させます。
4)主鏡の中心が筒先側にずれて見えている時
右上と右下の押しネジを均等に緩め、左側の押しネジを締めて主鏡の中心をドローチューブの中央に移動させます。
3.主鏡の傾きの調整(その1)
次に主鏡の傾きの大まかな調整を行います。
光軸修正用のアイピースもしくはフィルムケースの小孔から斜鏡を見ると、そこには主鏡と主鏡に写った斜鏡、
さらには、光軸修正用のアイピースもしくはフィルムケースの小孔が見えます。それらの全てが中心に一致するように、
主鏡の傾きを調整するのです。
主鏡の傾きの調整は、主鏡セルの底部に付いている、2本1組で3組ある押しネジと引きネジを使います。
1組2本のネジですが、沈んでいるネジが押しネジで、出っ張っているのが引きネジです。(画像8を参照方)
画像8 |
画像9の様に、主鏡に写る斜鏡や斜鏡スパイダーの中心がドローチューブの中心からズレている場合は、
以下の方法で主鏡に写る斜鏡の中心とドローチューブの中心にあわせます。(画像10を参照、まだ少しずれていますが)
画像9 | 画像10 |
1)主鏡に写った斜鏡が、主鏡側に寄っている時(画像9の様な状態)
手前の調整ネジの引きネジを緩め、押しネジを締め、奥側の調整ネジの押しネジを緩め、引きネジを締める事で、
主鏡の手前側を押し込み、主鏡に写った斜鏡を中央に寄せます。
2)主鏡に写った斜鏡が、筒先側に寄っている時
手前の調整ネジの押しネジを緩め、引きネジを締め、奥側の調整ネジの引きネジを緩め、押しネジを締める事で、
主鏡の奥側を押し込み、主鏡に写った斜鏡を中央に寄せます。
3)主鏡に写った斜鏡が、上側に寄っている時
手前と奥側の調整ネジの押しネジを緩め、引きネジを締め、下側の調整ネジの引きネジを緩め、押しネジを締める事で、
主鏡の下側を押し込み、主鏡に写った斜鏡を中央に寄せます。
4)主鏡に写った斜鏡が、上側に寄っている時
手前と奥側の調整ネジの引きネジを緩め、押しネジを締め、下側の調整ネジの押しネジを緩め、引きネジを締める事で、
主鏡の上側を押し込み、主鏡に写った斜鏡を中央に寄せます。
4.主鏡の傾きの調整(その2)
最終調整は、夜、恒星を導入し、コマ収差の出方を見て合わせます。
1〜2等星位の明るさで、高度60゜以上の気流の影響を受け難い恒星を使う方が良いでしょう。
最終的には200〜300倍と高倍率で調整しますが、慣れない間は、低倍率で始めて、段々と倍率を上げればよいでしょう。
要は、ピントをわずかに内側、外側、(どちらでもよい)にずらして、画像13の様に全方向に平等にボケているように調整します。
光軸が合っていないと、画像11の様にボケが偏って見えるのです。
画像11 | 画像12 | 画像13 |
1)主鏡や斜鏡の圧迫有無の確認
対象の恒星を導入して、ピントをずらした時に、焦点の内側で横に楕円、外側で縦に楕円となったり、はっきりとした
3角形になったりする時は、主鏡が圧迫されていると思われます。主鏡セルの光軸修正ネジを緩めて、ピントの前焦点、
後焦点位置とも同じように円形にボケる様にします。
2)ボケ方向の確認
最後の段階ですが、ピントをずらした時の恒星像のボケの方向を確認します。例えば、画像11の様に左下が最初にボケ出し、
中心が右上に寄っている場合つまり、左下に尾を引いたコマ状態になっている時は、主鏡の焦点位置は右上方向に
寄っている事になります。
3)光軸の調整
赤道儀の微動を使って、恒星像の中心が偏っている方向の視野の端に恒星を移動させます。画像11の様な場合は、
次の画像12の様に、視野の右上に移動させます。そして、主鏡セルの光軸修正ネジを調整しながら、恒星を中央に移動させます。
これを繰り返して、視野の中心で、どちらの方向にも平等に同心円にボケる様になれば、光軸の修正は完了です。
低倍率で行った場合は、倍率を上げて、繰り返します。また、目視で行うより、コンパクトデジカメ、ビデオカメラ、
ウェブカム等のモニターで像を確認できるデジタル機器があれば、それを利用した方が精度が上がります。
4)ファインダーの調整
光軸修正ネジで、主鏡の傾きを変えると、ファインダーの方向にずれが発生しますので、最後に恒星を中央に導入した状態で、
必ずファインダーの向きを合わせて下さい。