天体写真関連

Written by S.Yoneyama


目次

1.カメラレンズの焦点距離別 フイルム上の画像サイズ

2.固定撮影で星を点像に写す限界露出時間

3.固定撮影での限界等級(ISO400天の赤道上)

4.固定撮影対象の星雲・星団一覧表

5.面白い天体写真の対象

6.固定撮影方法による天体写真の撮影手引き

7.月と惑星の撮影時の露出時間

8.月食の撮影方法と露出表


1.カメラレンズの焦点距離別 フイルム上の画像サイズ

レンズの
焦点距離
(mm)
35mm判の画角
(:36mmX24mm)
対角線
画角
1mm当り
の角度
月の像の
外形(mm)
28 64°×46° 74°00' 2°00' 0.25
50 39°×26° 46°00' 1°12' 0.45
85 25°20'×17°00' 28°30' 41' 0.77
135 15°10'×10°10' 18°00' 25' 1.2
200 10°20'× 6°50' 12°30' 17' 1.8
300 6°50'× 4°30' 8°10' 11' 2.7
400 5°10'× 3°30' 6°10' 9' 3.6
500 4°10'× 2°50' 5°00' 7' 4.5
800 2°30'× 1°40' 3°00' 5' 7.2
1000 2°00'× 1°20' 2°30' 4' 9.0

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2.固定撮影で星を点像に写す限界露出時間
(フイルム上で星の伸びを0.05mm以下に押さえる条件)

カメラの
焦点距離
赤緯(天の北極=北極星を90°とした天空の緯度)
赤道 20° 40° 60° 70° 80°
28mm 24秒 26秒 32秒 49秒 72秒 141秒
50mm 14秒 15秒 18秒 27秒 40秒 79秒
85mm 8秒 9秒 11秒 16秒 24秒 46秒
135mm 5秒 5秒 7秒 10秒 15秒 29秒

写真を大伸ばしする時は露出を上表の60%程度に押さえ
フイルム上での星の伸びを0.03mm以下に押さえた方が良い

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3.固定撮影での限界等級 (ISO400天の赤道上)

レンズの
焦点距離
レンズの有効径(mm) 赤緯による補正
30 35 40 50 60 赤緯 等級の伸び
50mm 8.2 8.6 9.0 50° 0.4等級
85mm 7.7 8.0 8.3 8.8 70° 1.0
135mm 7.2 7.5 7.8 8.3 8.7 80° 1.6
200mm 6.7 7.1 7.3 7.9 8.3 85° 2.2

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4.固定撮影対象の星雲・星団一覧表

季節 星座名称 メシエ番号等 種類 等級 俗 称
かに座 M44 散開星団 3.7 プレセペ
かみのけ座 Mel111 散開星団 2.7
ヘラクレス座 M13 球状星団 5.7
はくちょう座 M39 散開星団 5.2
さそり座 M6 散開星団 5.3
さそり座 M7 散開星団 3.2
いて座 M8 散光星雲 6.8 干潟星雲
いて座 M17 散光星雲 6.9 オメガ星雲
いて座 M20 散光星雲 6.3 三裂星雲
アンドロメダ座 M31 小宇宙 4.4 アンドロメダ大星雲
さんかく座 M33 小宇宙 6.3
ペルセウス座 h−x 散開星団 4.4&
4.7 
2連散開星団
オリオン座 M42 散光星雲 4.0 オリオン大星雲
おうし座 M45 散開星団 1.4 プレアデス(すばる)
おうし座 Mel25 散開星団 0.8 ヒアデス
おおいぬ座 M41 散開星団 5.0
ふたご座 M35 散開星団 5.3
 

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5.面白い天体写真の対象

季節 対象 概 要
一年中 星の日周運動
(北の方向)
天文の写真に良く見られる、北極星を中心にレコード盤の様な
同心円を描いた星の軌跡です。 この前12時間以上の連続写真
(半円以上の円弧)が天文ガイドの読者の写真の最優秀作に選ば
れていました。 固定撮影でも素晴らしい写真が撮れます。
12時間以上となると冬至前後のきわめて限定された時期に、
一晩中晴れていて 途中に車の明かり等が入り込まず、飛行機も
飛ばず、夜の冷気でカメラレンズに露が付かない様に工夫し
・・・等相当な 苦労と運がなければ撮れない対象で、天文
ファンは一度は試したいテーマです。

撮影方法 ISO100なら絞り4程度、ISO400なら
絞り5.6〜9程度、固定撮影の2〜3時間連続露出で
けっこう面白い写真が撮れます。レンズは標準か広角が面白いです。
カノープス
(南の方向)
りゅうこつ座のα、全天でシリウスに次いで2番目に明るい星
(-0.72等級)、日本では南の水平線上にかろうじて見られる星。
南が開けていて暗く澄んだ場所でないと見られず、私もまだ見た事が
ありません。位置はおおいぬ座のシリウスの真南です。もし、南方向
の条件が良ければ、冬に試して見て下さい。固定撮影で1時間くらい
カノープスの軌跡を撮影できれば、天文雑誌に載れるくらいの対象です。

撮影条件は日周運動と同様です。(レンズは標準〜望遠)
一年中 流星群 撮影方法 ISO400〜800で絞りを2〜2.8、露出時間を
5〜10分で何枚も撮り続ける。レンズは広角か標準。
大火球や隕石となる流星が撮影された場合は、学術的にも貴重な
資料となるので、撮影開始・終了時間を記録要。(秒まで時間を
正確に)もし大流星を見れたら流れた時刻と継続時間もメモして
おくとベストです。

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6.固定撮影方法による天体写真の撮影手引き

分類 項目 詳細説明
必要な道具 カメラ
ボディー
レンズ交換が可能な一眼レフカメラが望ましい。
レンズ径の小さなコンパクトカメラや使い捨てカメラは不可です。
AE/AFでなくても良い。天体写真には余り必要の無い機能で、
マニュアルカメラが一番良い。
天体写真は、何秒〜何時間と長時間の露出が必要であり、シャッターを
長時間開放にする機能が必要です。通常のカメラのシャッタースピード
の“B”で撮影します。マニュアルシャッター方式のカメラでないと
シャッターを開放している間に電池が消耗し、長時間露出が出来ない物
が多いです。
新規にカメラを購入する場合は、その点を良く確認して下さい。

天体写真専用にカメラを新たに求めるなら、オリンパスOM1等の
マニュアルカメラの中古品を求める方が得策です。

なお、カメラのピント面が交換可能であれば、全面透過式か中央部のみ
マット面の透過式のピント面に交換した方が良いです。
天体写真の対象が暗い為、普通のマット面では、星が良く見えず構図を
決めるのに苦労します。
オリンパスOM1はピント面も交換できます。ピント面も2〜3千円
程度です。
レンズ 固定撮影では、望遠レンズより標準レンズや広角レンズの方が用途が
多いので、28mm〜50mm程度のレンズが1本あれば充分です。
広角と標準の2本もあれば、贅沢です。
レンズの明るさは、明るい事が必須で、F1.4〜F2.8の物が必要です。
ズームレンズはF値が暗く天体写真には不向きです。
三脚 天体写真は、長時間の露出が必要であり、しっかりした三脚が必要です。
レリーズ 長時間露出の間、カメラをぶらさずに手でシャッターボタンを押し続ける
事は困難であり、シャッターを開放にしておくレリーズが必須です。
レリーズは、ワンタッチ・ロック式の物が便利です。片手でロックや
ロック解除が可能な物で、カメラ店で店の人に言えば手に入ります。
数百円〜千円程度で買えるはずです。
レンズ
フード
天体写真は通常夜間に撮影するため、地上の人工の明かりが、レンズに
差し込む可能性があります。この様な迷光を遮る為にレンズフードを使用
した方が安全です。
懐中電灯 暗い場所で、カメラを操作したり、時計を見たり、メモを書いたりする為に
懐中電灯は必要です。ただし、普通の懐中電灯だと明るすぎて、夜空に
なれて星が良く見える様になった目にはまぶし過ぎるため、減光する必要が
あります。
最も簡単な減光方法は、赤いセロハン紙を何枚か巻き付けるか、赤色の
ビニールテープを張りつける 事です。
キッチン
タイマー
時計が見れない様な暗い所で、露出時間を知る為にあれば便利な物です。
希望する露出時間に合わせておいて、スタートボタンを押してから、
シャッターを開き、タイマーのアラームがなったらシャッターを閉じれば
正確な露出が選られます。
なお、30秒程度であれば、自分で秒数を数えられる様になれます。
私は、「あいうえお」を1秒で言える様に繰り返し練習をしました。
そうすれば、「あいうえお」〜「わいうえを」まで数えるとちょうど10秒
になります。また、「あ」だけだと0.2秒となり、1/2秒等の時間を
計るのにも使えて便利です。試して見て下さい。
フイルム 感度 撮影対象が暗い為、月食等の特別な場合を除き、高感度フイルムが必要
です。最低でもISO400以上で、 ISO800〜ISO3200の超高感度フイルムが
手に入りますので、それらを使います。
星を点状に写す場合は、 ISO800か1600が適当でしょう。
星の日周運動を写す場合は、ISO100〜400が適当でしょう。
種類 天体写真は白黒でもカラーでも楽しめる対象であり、どちらでも
かまいません。ただし星にも色がありますから、カラーの方がより楽しい
かも知れません。
カラーフイルムにはリバーサルとネガの2タイプがありますが、焼き付け
の時調整可能なネガの方が扱い易いので、慣れるまではネガカラー
フィルムを推奨します。
製品例 固定撮影向きのカラーフイルム例を示します。

○ネガカラーフイルム
 ・フジカラースーパーG ACE400(ISO400)
 ・コニカカラーLV400(ISO400)
 ・コダックスーパーゴールド400(ISO400)
 ・フジカラースーパーG ACE800(ISO800)
 ・フジカラースーパーHG1600(ISO1600)
 ・コダックスーパーゴールド1600(ISO1600)
 ・コニカカラーGX3200プロ(ISO3200)

○リバーサルカラーフイルム
 ・フジクロームプロビア400プロ(ISO400)
 ・コダックエクタクロームEX400プロ(ISO400)
 ・フジクロームプロビア1600プロ(ISO1600)
 ・コダックエクタクロームEX1600プロ(ISO1600)
撮影方法 撮影場所 出来るだけ夜空の暗い場所、回りに人工の明かりの少ない場所を探します。
都会では適切な場所が少ないので、出来れば郊外に出た方が良いですね。
森の中で開けた場所や明るい都市や町を遮る山の反対側等が良いでしょう。
準備 しっかりした地面の上に三脚を固定し、カメラをセットします。
カメラの焦点距離は無限遠に合わせ、絞りを開放に合わせます。なお、
F値が1.4より明るいレンズの場合は、一絞り分絞り込んでF1.8〜F2
程度にした方が、レンズの収差の影響を少なく出来、きれいな点状の
星像が選られます。
次にシャッタースピードをBに合わせ、レリーズをセットします。
なお、レリーズはあらかじめ押した状態でロックされる様にセットして
おきます。
カメラを撮影対象に向け、ファインダーで構図を決めます。もし、地上の
風景も写される場合は、構図が地面に平行になる様に構図を決めましょう。
地面が斜めになるのは変ですからね。
撮影 いよいよ撮影ですね。
カメラに振動を与えない様に、レリーズを押してシャッターを開きます。
時計を見ながら、あらかじめ決めた露出時間がきたら、レリーズを開放し、
シャッターを閉じます。
撮影後、撮影開始時間と露出時間をメモしておき、後でネガの整理が可能
な様にして置きます。
露出時間ですが、暗い場所だと時計が見えないでしょうから、アラーム付き
のキッチンタイマーを使用すると便利です。
星を点像に写す場合の露出時間は、上記 2.固定撮影で星を点像に写す
限界露出時間の表を参考にして下さい。
なお、夜空が明るい場合は、人工の明かりの影響で、好感度フィルムだと
20〜30秒の露出でもフイルムがそれらの明かりにかぶってしまし、星
が埋もれてしまう事があります。露出時間を5〜10秒間隔で変えて、
最も良く写る露出時間を探して見て下さい。
天の川が肉眼で見れるところではその様な心配はありませんので、フイルム
感度を上げて、露出時間を可能な限り長くして良い写真を撮りましょう。
後は構図を変えて色々な星座を撮りましょう。
現像
焼き付け
現像 現像は町の写真店にお願いしますが、その時必ず天体写真である事を告げて
下さい。注意しておかないと、現像したフイルムに何も写っていないと思わ
れ焼き付けをしてくれない時があります。
焼き付け 出来上がった写真が、全体に暗くて星が余り写っていない場合は、露出不足
が考えられますが、ネガをみてもっと星が写っている場合は、焼き付けが
強すぎる可能性があります。その場合は、写真店にもう少し淡く焼き付けて
もらう様に頼んでみて下さい。
逆に、全体が白っぽくなっている場合は、露出過剰ですので、今度は強く
焼き付ける様に頼んで下さい。

この頃は、スピード仕上げを行うEDP店がありますので、多少割高ですが
短時間で試し焼きが出来る為、焼き付け時間に色々注文を付けて、気に
行った写真を手に入れる事が出来ます。

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7.月と惑星の撮影時の露出時間

フイルム感度はISO100相当の場合の通常の露出時間を示します。
表の左は対象が天頂にあった場合の値ですから、撮影対象の高度に応じた倍率を乗じた露出時間とする必要があります。
惑星の露出時間は、表面の模様等を写す時の露出であり、標準レンズや通常の望遠レンズ(200mm前後)の焦点距離の短いレンズで撮影する時は、表の露出時間を最低値と考え、露出時間を長めにして下さい。
また、下の表の値はあくまで参考値であり、奇麗に撮れる事を保証する物ではありません。
フイルムの特性や空の透明度によっても差が生じるので、色々試して自分なりの露出表を作って下さい。

対 象 レンズのF値 大気減光の補正
2.8 4.0 5.6 8 11 16 22 高度 露出倍率
月の地球照 2秒 4秒 8秒 16秒 32秒 60秒
三日月 1/125 1/60 1/30 1/15 1/8 1/4 1/2 天頂 1.00
五日月 1/250 1/125 1/60 1/30 1/15 1/8 1/4 50゜ 1.06
半月(上下弦) 1/500 1/250 1/125 1/60 1/30 1/15 1/8 40゜ 1.1
月齢11形 1/1000 1/500 1/250 1/125 1/60 1/30 1/15 30゜ 1.2
満 月 1/2000 1/1000 1/500 1/250 1/125 1/60 1/30 25゜ 1.3
水 星 1/4000 1/2000 1/1000 1/500 1/250 1/125 1/60 20゜ 1.6
金 星 1/8000 1/4000 1/2000 1/1000 1/500 15゜ 1.9
火 星 1/2000 1/1000 1/500 1/250 1/125 1/60 1/30 10゜ 2.5
木 星 1/500 1/250 1/125 1/60 1/30 1/15 1/8 8゜ 3.0
土 星 1/125 1/60 1/30 1/15 1/8 1/4 1/2 6゜ 4.0
天王星 1/30 1/15 1/8 1/4 1/2 1 2 4゜ 6.3
木星4大衛星 1/2 1 2 4 8 15 30 2゜ 17.4

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8.月食の撮影方法と露出表

月食は、固定撮影でも簡単に写せる対象ですから、試しに写して見るのも面白いでしょう。
望遠レンズで時間を追って欠け具合を写す方法と、1枚のコマに5分間隔で連続して写す方法があります。
後者の場合は多重露出が可能なカメラで撮影するか、B(バルブ)でシャッターを開放にしたままで、レンズの前に覆いをして置き、5分毎に覆いを外す方法とがあります。覆いを外す場合は、長時間露出が可能なマニュアルシャッター式のカメラと 手動での適正露出(1/5秒以上)と成るような減光フィルター(ND400 やND8等)が必要です。
皆既食の開始から終了迄に月は20度弱動き、本影食の開始から終了迄に月は50 度弱動くので、皆既食だけを多重露出するレンズの焦点距離は 100mm以下が、本影食の開始から終了迄なら50mm(出来れば35mm)以下が必要です。

月食撮影の露出時間表(ISO100のフイルム使用、大気減光補正無し)

食 分 露 出 ND400使用時
半影食(満月) 8 1/250〜1/500 8 1秒〜2秒
本影食開始/終了時 5.6 1/250〜1/500 5.6 1秒〜2秒
食分20% 5.6 1/250〜1/500 5.6 1秒〜2秒
食分40% 4 1/250〜1/500 4 1秒〜2秒
食分60% 4 1/125〜1/250 4 2秒〜4秒
食分80% 4 1/30〜1/60
皆既食開始/終了時 4 1秒〜2秒
皆既中 4 5秒〜10秒

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from 2004.12.01